RELIFE

2019年9月から約5か月間に及んだ「オーストラリアの森林火災」は、かの大陸に固有の種も含めて10億を超える動物たちの命を奪った。昆虫などを含めればこの数は、更に天文学的な数字へと膨らむだろう。
多くの人々が、何か月の間に渡りこの火災を食い止めようと懸命の努力をしたが、次から次へと燃え広がる火災を相手にするには、あまりにも無力だった。
人の力では、どうすることもできなかった火災は、2月に3日間降り続いた大雨によってようやく鎮火したが、結果日本の面積の1/3にあたる10万K㎡の森林が黒焦げになってしまった。
火種が、火の不始末だったのか、自然発火だったのかは、さほど問題はない。根本的な問題が地球温暖化による異常気象にあるのは間違いはない。火災前のオーストラリアでは雨が極端に少なく例年の半分の降水量にも満たなかった。加えて年間の平均気温は1.5度も上昇し、その結果、極端に乾燥した大地になっていたのだ。
30年以上前から、科学者をはじめ、活動家の人たちが働きかけ、地球温暖化を防ごうとしていたが、人が生きていく上での活動がある以上、理想通りに事は進むはずもない。このように牛歩のようにのらりくらりと『CO2削減』に各国が取り組んできたわけだが、皮肉にも今回の火災では『二酸化炭素の低排出国116カ国』の年間総排出量以上の数字である、実に4億トンの二酸化炭素が一気に増えてしまった。
2019年初頭には、ブラジルのアマゾン川流域で発生した火災も同等の4億トンほどのCO2を排出している。
こうした森林火災で発生したCO2は地球温暖化に拍車をかけて、さらなる熱波をはじめとする異常気象を引き起こす。今、僕らは抜け出すことの出来ない「温暖化の悪循環」の時代に入っているのだ。
オーストラリアをはじめ、山火事で失われた森は短時間で簡単には戻ることはない。これまでは、どこかで山火事があっても熱帯雨林の原生林が吸収し、酸素に戻して循環してきたが、これだけの規模の森が再び、かつての様に生茂るには途方もない時間がかかるだろう。
焼け焦げた森の中で、新たな命も生まれ再生しようとしているが、残念ながら人がどんなに努力しても、もう元には戻せない。森がない以上、生態系も戻ることはない。何もこれは遠いオーストラリアだけの話ではない。
焼けた森でなんとか生きぬこうとしているコアラの姿は、そのまま明日の僕らの姿なのかもしれない。
